変形性関節症 Osteoarthritis
WHO(世界保健機構)では、鍼灸治療が 関節炎 に適応であることを認めています。
変形性関節症の概念
関節軟骨が変性し軟骨干骨に骨改変が起こり、結果として変形や破壊が生じた病態。
→関節の変形による疼痛、運動制限。 慢性関節疾患。
変形性関節症の病態
血液供給が不十分or関節の酷使→軟骨表面がすり減り、小亀裂を生じる。
→その隙間から入り込んだ分解群素(関節液や軟骨細胞由来のもの)は亀裂を深める。
→関節軟骨の磨耗は軟骨に影響を及ぼす。
→軟骨下骨に”悪い意味での”骨改変が起こる。→結果、骨に変形や破壊。
変形性関節症の分類
- 一次性変形性関節症
概念:原因疾患がないもの。
好発:加齢による関節軟骨の退行性変化+力学的ストレス。 本疾患の大多数が一次性。 - 二次性変形性関節症
概念:他の疾患に続溌して発症。 ex. 血液供給が不十分
好発:股関節に多い。
変形性関節症の成因
- 素因、肥満、性ホルモンの影響、血流障害 etc→軟骨の加齢1を促進する因子と考えられている。
- 局所的要因
機械的ストレス(圧迫・摩擦)の異常→軟骨を障害
関節疾患と関節周囲疾患は、全て二次性関節症の原因となる
・先天奇形 (先天性股関節脱臼、内反足 etc)
・感染 (化膿性関節炎、結核性関節炎 etc)
・非特異的炎症 (関節リウマチ)
・代謝疾患 (痛風 etc)
・関節血症 (血友病)
・外傷 (関節面骨折、半月板損傷 etc)
・後天性関節面適合不全
・ペルテス病
・その他
変形性関節症の疫学
中年以後に多い。
成人の半数以上(65歳以上の大部分)に変形性関節症の所見がみられる。
膝関節が最も多く、40歳以上の人の20%以上。
股関節症の頻度は高くないが機能障害が強いため、受診患者は多い。
膝関節、股関節…女性に多い。
肘関節…スポーツ選手や肉体労働者に多い。
通常、単発性(関節リウマチは多発性、手指では多発性もある)
変形性関節症の症状
慢性の疼痛、運動制限、しばしば腫脹や関節水腫を伴う。
- 疼痛
特徴…過重や運動により発症。特に運動開始時に痛い。
〔膝関節症〕立つときや階段昇降時に強く認める。
※安静にしていても痛む→骨壊死症、感染症、腫瘍を考慮する。 - 運動制限
屈曲制限、伸展制限
【疼痛に対する反応性の筋緊張で動かせない
→関節包のの肥厚と軟部組織の拘縮で動かせない(関節拘縮)→関節の変形で動かせない】 - 関節変形
〔膝関節症〕多くの者が内反膝(O脚) 【荷重の大きな内側関節面の磨耗によるO脚】 - 関節液貯留(関節腫脹) 【滑膜の慢性炎症による】
〔膝関節症〕多量に貯留しやすい→〔膝蓋跳動試験陽性〕 - 筋萎縮
〔膝関節症〕大腿四頭筋萎縮
〔股関節症〕大腿四頭筋、大臀筋、外転筋群の萎縮
*全身症状がなく関節症状のみ→〔赤沈正常、白血球数正常〕
変形性股関節症
変形性股関節症の成因
カ学的負担のためにおこる関節軟骨の変形・摩滅。
加齢による軟骨の変形および股関節への加重。
変形性股関節症の分類
- 一次性(特発性)変股症…15% 老齢者に多い。
- 二次性(続発性)変股症…80% 若年者でも発症する。
・先天性疾患(先天性股関節脱自が最多、次いで自蓋形成不全)
・ペルテス病
・大腿骨頭壊死
・外傷(大腿骨頸部内側骨折、股関節脱臼骨折)
変形性股関節症の疫学
女性に多い。
変形性股関節症の症状
- (初発)股関節部の易疲労性、運動により増悪する疼痛
- 疼痛 【繰り返される滑膜への刺激で引き起こされる炎症、靭帯・筋の過緊張 → 大腿直筋起始部の圧痛が原因】
歩行・立ち座り・寝返り→疼痛回避歩行の原因 - 筋萎縮…大腿四頭筋、大殿筋、外転筋群の萎縮、筋力低下→軟性墜落性跛行の原因
- 股関節屈曲拘縮 【滑膜の炎症と、それに伴う関節包の肥厚 → 関節変形と伸展制限が起こる】
〔トーマステスト陽性〕 - 見かけ上の下肢の短縮 → 硬性墜落性跛行の原因
【屈曲・内転拘縮があるときにみられる → 伸展制限】 - 股関節運動障害(伸展障害など)、可動域制限
- 小・中殿筋機能不全による跛行 【外転筋の筋力低下】
硬性墜落性跛行
トレンデレンブルグ徴候(片脚立脚時、健側の骨盤が下降する現象)
トレンデレンブルグ跛行
デュシェンヌ現象
変形性膝関節症
変形性膝関節症の概念
加齢に伴う関節軟骨の退行性変化が基盤。
荷重関節のため、一次性が多い。
変形性関節症のうち膝は最多。
変形性膝関節症の好発
50歳以上の女性。特に肥満を認める人に多い 【体重による負荷が原因の1つ】
多くは内側の関節面に変化が起こりやすい。
変形性膝関節症の症状
全身検査所見に変化なし。
(初発症状)立つときや、階段昇降時の疼痛が多い。
(経過とともに)関節の腫脹、膝蓋跳動。
(進行)著明な内反変形、大腿四頭筋萎縮がみられる。
- 膝関節痛 → 主に膝関節内側が痛む。
運動時・負荷時のみ痛み強い。安静時の痛みはない。
立ち上がりetc動作開始時痛、階段昇降時痛(降時がより強い痛み)、歩行痛
正座痛
内側関節裂隙の圧痛 - 可動域制娘 【完全伸展・屈曲のどちらか、または両方が制限される】
ex.正座不能、あぐらがかけない。 - 変形
多くは内反膝 → 関節裂隙狭小 【荷重の大きな内側関節面の磨耗によるO脚】
〔進行例〕歩行時側方動揺性を生じる。 - 関節腫脹、関節水腫 →〔膝蓋跳動試験陽性〕 【滑膜の非特異性慢性炎症による】
- 大腿四頭筋の萎縮と筋力低下 → 膝関節こ負担増加→症状を悪化させる悪循環に陥る。